画家 黒木拓実さんとの出会い
兵庫県在住の画家
2023年夏頃から始まった事務所リニューアル。
この事務所リニューアルは、少しの前の表現になりますがADKOHKEN 2.0とでもいうべき、気持ちを新たにして出発する大きな転機となるものとして、自分たちで丁寧に設計をしました。
社員が日々、クリエイティブを生み出す2Fのワークスペースはもちろん、お客さんや我々自身も使うことになる1F会議室をどのように空間作りをするかは、ずうっと考え続けてきました。制限の少ない自由な発想が許された反面、その自由さがむしろ悩みの種となりました。事務所だし、会議室であるけれど、とんがってもいたいという、そんな思いでです。
何ヶ月ものあいだ、座右の銘的なもの、社是・ミッションのような表現をみたいなことを掲出しようかと当たり前に考えるわけですが、どうにもしっくりきません。オフィスのリニューアルは終わっているのに、なにかこう、未完成感を残したままでした。
年も明け、2024年が始まった頃、関連会社である合同会社ドローンの窓口(本社 川崎市)の役員会議を品川で開催することになりました。
会社のこと、業務のこと、他愛もない話をしている中で、僕が画家を探しているという話題の時に、ふとメンバーから一人の画家、黒木拓実さんの紹介を受けたのです。
地元、兵庫県在住の画家ということは、直接お会いしやすいし、描いて欲しいコンセプトも明確に伝えられるのではないかと瞬時に思いました。
コンセプトとしたいのは「以和為貴」
書道家死す
1年半前の秋、父親がこの世を去りました。
彼は書道を愛し、地域の例大祭において、この播磨地域で秋に行われる例大祭の墨書きを10年にわたり担当してきました。
2022年当時、自分たちが例大祭の世話人(祭の運営をコントロールする任務)をしたので、父親もこれまで以上に力が入ったようで、闘病の末期ということで最後まではできなかったけれど、かたちに残るものは書き上げました。
最後は書道教室の最後の生徒、孫(僕の娘)がリリーフとして書きました。
例大祭前夜、墨書きする人がいなくなって、急遽、娘の書でその場を凌ぐしかありませんでした。
書道家ばかりが担当してきたこのミッションを、当時16歳の娘が書いたのも父親は驚きとともに、病室で喜んでいました。てっきり他の誰かに頼むものと思ったらしく、まさかと。
筆跡が変わっていること、当然にして父親のクオリティに達していないことに気づかない世話人・関係者はいなかったのですが、誰もそのことに触れなかった優しさに、今でも感謝しかありません。
お通夜が終わり、家族のみでいろんな話をしていたなか、驚いたのは、いつもは物静かな息子(当時中1)が突如として喋りまくっています。
話題は相対性理論と宇宙論。家族は誰もついていけません。僕と兄がハイボールを飲んでいて、きっと初めてなのかな、彼はプレーンな炭酸水を飲みました。「二酸化炭素はやはり美味しくないな」だって。みんな大爆笑。
心残りなのは、自宅の床間に飾る掛軸に書いてほしかった文字、2年半前の夏にお願いしていたものが実現できなかったこと。
それが「以和為貴」
「神戸でライブでやらせてもらえませんか」
ドロ窓品川会議の直後、神戸三宮のアートギャラリーにおいて展示会開催の情報を得ました。
早速、伺うアポイントをいただき、そこで2時間以上、アートの魅力や人間の素晴らしさと愚かさについてなど、語り合いました。
もう心の中では描いて欲しい一心で溢れ、そのことを告げると想定外の提案が。
「ライブでやらせてもらえませんか」と。
一瞬、何を言っているのかがわかりませんでした。
理解するために、「絵画 ライブパフォーマンス」と検索したことを思い出します。
数分後、「最速で完成させる」にはこれがベストだと理解しました。
2024年2月24日 14時、三宮と決まった瞬間でした。
絵のタイトルは「以和為貴」
彼のアートが、この空間に魂を吹き込んでくれることと期待しています。