街のシンボルとなることを願って
2023年の春頃、クライアント様からひとつのご要望をいただきました。
とても素敵な案件になりましたことに感謝し、ここでご紹介させていただこうと思います。
完了までの工程は難易度の高いミッションで、姫路大手前通り、いわゆるお城の前の50M幅道路という広告露出において厳格な規制があるエリアにおいての企業PRでした。
ビル壁面を使って、企業名・イメージの浸透を促していくというものです。
ビジュアル重視の広告・グラフィックデザインを創って欲しいというご要望でしたが、いろいろな角度から考えつつも、もしかしたら数年もすれば陳腐化してしまうのではないかという気がしていました。
またフルカラーの広告サインは、城下町のすばらしい景観を維持する観点からふさわしくないことも承知の上です。
そこでこのような冒頭文を添え、企画提案書を作りはじました。
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世界中には、その街のシンボルとなり、人々を魅了する美しい時計台が存在します。
かつて時計を持ち歩く習慣がない時代において、暮らしの中に時間という概念が浸透することに貢献してきました。
そして日本においては、特に有名な銀座四丁目の時計のそばに、[SEIKO]のロゴを見かけた人は多いのではないでしょうか。
掛け時計で時間を知る必要性の減った現代においても、その存在による訴求力は衰えたわけではないと考えます。
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腕時計やスマートフォンでもその役目は果たせますが、世界中には、ビッグ・ベン(英)、ノートルダム大聖堂(仏)、プラハの天文時計(チェコ)のように、その街のシンボルとなり、また人々を魅了する美しい時計台がたくさん存在し続けているのです。
時計針のデザインも数十パターンを描いてみました。
視認性にも優れるインデックスバータイプや、知的な印象のローマ数字タイプ。海外ではローマ数字の腕時計がドレスコードとして最もフォーマルです。
太陽、月、十二宮の星座、主要な惑星の相対的な位置などを示す特殊な装置を備えた天文時計など魅力的な機械時計は数多くありますが、コンテンツを詰め込むことをせず、シンプルに見せたいとのクライアント様のご意向もあり、最終的にインデックスバータイプにおさまりました。
しかし、「3」と「4」だけはインデックスバーではなく数字の文字とし、なにかを表現する謎めいたデザインで、見る人に興味を抱かせたい! という隠れたメッセージにもなっています。
アナログ時計針が刻む”時間”というロマンは企業活動の継続そのものです。その街で暮らす人々へシンボリックな印象を与え続け、同時に企業ロゴを浸透させ続けられることを願っています。